令和6年サツキマス再生の会

FISHING REPORT

令和6年11月17日、 長良川サツキマス再生の会によるアマゴ発眼卵放流に今年も参加させて頂きました。

昨年は雪が降る寒い天気でしたが、今年は雪もなく暖かい日に行うことが出来ました。

昨年参加させて頂いた際の記事にも書いておりますが、放流事業に関する知識をより釣り人に周知するために非常に大切なことですので、もう一度同じ内容をここに書き記したいと思います。

すでに昨年の記事をお読みになった方や、今回サツキマス再生の会に参加された方々も、おさらいも兼ねてもう一度読み直して頂けると嬉しいです。

今回の発眼卵放流で、開会時にTIMONの下広さんからも説明がありましたが本来アマゴの産卵は本流よりも支流の方が適しているので、発眼卵放流も支流で行うべきです。

しかし、今回参加いただいている方々全員が発眼卵放流の経験があるわけではありませんので、やり方の説明を行うためには大人数に対応した広いエリアで行う必要があります。

よって、発眼卵の一部は下広さんがやり方を説明しながら吉田川本流エリアで放流を行っておりますが、来年以降は各々が支流へ行って放流していただけるのではないでしょうか。

私は昨年同様、高鷲町の支流へ行き放流を行なってきました。

スタッフ正者がこのエリアに放流を始めて今年で3年目。

2年前からスタッフの正者が同エリアで放流を開始し、継続的に放流を行なっておりますがアマゴは順調に増えているようです。

やはり稚魚放流よりも発眼卵放流の方が歩留まりが良いということも実感できております。

長良川のサツキマス名人も今年初参加。今年は名人と共にルアーの開発も行なっておりますのでお楽しみに。
アマゴの発眼卵。白くなっているのは死卵なので極力取り除いて放流します。(カビが生えるため)
秋の暖かい一日。少し雨も降りましたがなんとか天気も持ちました。

それでは本題の大切なお話しです。

長良川だけでなく、全国各地の放流事業に当てはまることですので、皆さんももう一度放流事業について考える機会にしていただければ幸いです。

放流事業と渓流魚の増殖について(おさらい)

まず結論から申し上げたいと思います。


放流をしない河川の方が、魚が減らないという事が研究で明らかになっています。(衝撃の展開)

でも今回集まった長良川フリークスは「自分達も何かしたい」という優しい気持ちを持った方ばかりです。
見て見ぬふりは出来ない愛のある方ばかりです。
その気持ちも十分解りますし、ありがたいのです。

勘違いを招くといけませんので続きを書きます。
放流には幾つか種類があります。


などが挙げられますが、この中で最もやってはいけないのが①稚魚放流です。

本来自然繁殖で生まれた渓流魚が体長15cmに達することの出来る残存率(いわゆる歩留まり)はおよそ2%と言われています。(15cmに達するのは1歳の夏以降であり、卵数を100とするとその中から2尾しか残らないとされる)

もう少し細分化して解説すると、卵数を100%として0歳の夏で5.2%、1歳の夏で1.9%、2歳の夏で1.1%の生存率と言われています。これはあくまで自然繁殖する渓流魚での話です。

これに対して放流された養殖魚の残存率はこれより低く、自然繁殖魚の半分以下であることが判明したそうです。

これまで日本の各河川では魚類増殖を目的として、稚魚放流を主体に放流活動を行っています。


しかしながら、この稚魚放流の歩留まりの悪さは以前から有名な話でした。
それなのに何故、今もまだハイコストな稚魚放流が盛んに行われるのか?

(ちなみに稚魚って無茶苦茶コスト掛かるんです)


これは漁協からすれば稚魚放流をする事で、〇〇万尾の魚が瞬間的にでも増殖したことが明確であるし、実績を数値化することが出来ることもあるかと思います。


漁協は漁業権を与えられる代わりに増殖義務を課せられており、魚類の増殖を実績として納めなくてはなりません。

ちなみにこの放流事業においてどれくらいのコストが掛かっているのか調べてみました。

このデータは平成25年の物ですので、今はこの時のコストよりかなり大きくなっていますが参考までにみてみましょう。

放流後の残存率と種苗単価をもとに、全長15cmの渓流魚を1尾増やすのに必要な種苗代は

平成25年の段階でもかなりのコストが掛かっている状態です。今回、サツキマス再生の会で放流された初眼卵の1粒単価は3円との事でしたので、現在は値上げの影響もかなり受けていると言えます。

また、山間部の魚類養殖業は年々衰退しており、これらの養殖業を守るために放流活動が根強く残ったのかもしれません。もちろん産業の維持は我々人間にとっては重要なことで致し方ない部分もあるのだと思います。

しかしこの稚魚放流は自然界では起こり得ない密度で大量の稚魚を放ち、生態系のバランスを損ね、長期的に見て魚類の減少をさせる事が分かっています。

そして①稚魚放流よりも歩留まりが良いと言われるのが②親魚放流と③発眼卵放流と言われています。
これは稚魚になるまで養殖された魚よりも、河川内で育った稚魚の方が強く生き残る確率が高いからです。

詳しくはこちらのリンクを見て下さい↓

放流しても魚は増えない~放流は河川の魚類群集に長期的な悪影響をもたらすことを解明~(北海道大学地球環境科学研究院 助教 先崎理之)

渓流魚の増やし方〜放流と自然繁殖を上手に使いこなす〜(発行:水産庁 監修:元東京海洋大学 丸山隆、全国内水面漁業協同組合連合会 大越徹夫)

遊漁者の我々が今しなければいけないのは、この間違った認識を理解し、周知し、漁協へしっかりと意見すること。
遊漁者一人が騒いでもなかなか今の放流スタイルを変えていく事は難しいですが、たくさんの方々が正しいやり方を認識する事が第一歩だと考えています。

今回サツキマス再生の会では③発眼卵放流を行っています。より正しい放流活動を周知するのに大変意味のある活動だと思っています。

そして発眼卵放流の手間が大変な手間である事は参加された皆様であればお解りだと思います。
この放流方法で魚を増殖させることが可能な発眼卵の量を扱うこともまた難しいのです。

その為、成熟した養殖の魚を産卵間近に放流し産卵させる②親魚放流が効率的な方法でコスト面でも良いと考えています。

私自身も含め、これからもこういった知識を学びながら自分たちに出来る事を行なっていけたら良いのではないでしょうか。

今回参加された優しい釣り人の皆様、本当にお疲れ様でした!

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